美容室の経営・独立開業は儲かる?実態を知って経営のイメージをつかもう
「美容室の経営を考えているが不安…」
「美容室経営で儲けるにはどうしたらいい?」
美容室を経営したい、独立して開業したいと思う一方、「果たして美容室は儲かるのか?」と気になる方も多いことでしょう。実際、全国の美容室の数は増え続けており、美容室経営はとてもシビアな状態です。
この記事では、美容室の経営・独立開業の実態について解説します。
経営に失敗しないための対策もまとめていますので、ぜひ活用して今からできる対策を考えていきましょう。
美容室の経営・独立開業の実態とは?
美容室経営を長く続けるためには、何より「儲け」がないと成り立ちません。儲け=利益を出すことは、すべての経営者にとって重要な要素です。
美容室経営は果たして儲かるのか?美容業界の実態を知って、経営・独立開業への対策に当てましょう。
美容室の数や市場規模
美容業は開業資金を低く抑えられるため、参入しやすい業種といわれています。徒歩圏内に、いくつも美容室があるという地域も少なくありません。
2019年度の美容室の数と市場規模は、以下のとおりです。
・美容室の数:254,422施設(※1)
・市場規模:14,190億円(※2)
出典 ※1 厚生労働省「令和元年度衛生行政報告例の概要」
※2 ホットペッパービューティーアカデミー「数字で見る美容業界」
市場規模とは、業界全体の売上のことです。美容室の市場規模は14,000億円前後と、2016~2019年の4年でほぼ安定しています。
つまり、約14,000億円の売上をめぐって、美容業界は競っている状態です。
ちなみに、2019年度の数字で単純計算すると、1施設あたりの毎月の売上は約48万円。
美容室の規模にもよりますが、あまり大きい数字とは言えません。
2020年以降は、新型コロナウイルスの影響で苦しい状況が続いています。
状況が落ち着いたとしても、少子高齢化が進む日本では人口減少が予想されており、市場規模も小さくなると言われています。
約14,000億円をめぐって、自分の美容室でどのくらいシェアを獲得できるか?が生き残るカギとなるでしょう。
美容室の平均客数と客単価
1,000円カットやカラー専門店などの格安美容室が台頭するなか、美容室経営では「客数の減少」「客単価の減少」が課題となっています。
美容室の1日当たりの平均客数と、立地条件ごとの客単価は以下のとおりです。
✔平均客数:0~4人が最も多い
✔平均客単価:4,000~5,999円(商業地区、住宅地区、その他)
6,000~7,999円(郊外)
8,000~9,999円(複合施設内)
出典:厚生労働省「平成30年美容業の実態と経営改善の方策」
客単価とは、顧客1人が1回で支出する金額のことです。数字から見ても、客数の少なさは明らかで、立地条件によって売上に差が出るのがわかります。
「客数」と「客単価」は、売上に直結する数字です。
この数字を上げるため、
開業前から経費を抑える工夫をしたり、独自の強みや付加価値ををしっかり考えたりと準備をする必要があります。
美容業は、外見を美しく整えるだけが仕事ではありません。
癒しやリフレッシュなどの精神的な満足感を与えるにはどうしたらいいか、顧客の目線になって対策を考えましょう。
美容室の開業数と閉店数
美容室の数は年々増えており、私たちの生活に身近なコンビニよりも多いのはご存知ですか?
立地場所にもよりますが、店舗数が増えるほどライバルは多くなります。
美容室の開業数と閉店数は、以下のとおりです。
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | |
店舗数 ※1 | 247,578 | 251,140 | 254,422 |
開業数 ※1 | 4,218 | 3,562 | 3,282 |
閉店数 ※2 | 147 | 149 | 162 |
出典:※1 厚生労働省「令和元年度衛生行政報告例の概要」
※2 帝国データバンク「理美容業界の倒産動向調査(2019年度)」
開業数自体は減っているものの、店舗数は年々増えています。
客数を確保するため、クーポンやキャンペーンを活用しながら新規につなげたり、既存客へのサービス強化を行ったりと競争も激しくなると予想されます。
また、閉店数も増加傾向です。
後継者不足や経営者の高齢化など、店舗によっては閉店するリスクを抱えています。
新型コロナウイルス感染症の影響で閉店・廃業する店舗もこれから出てくるでしょう。
美容業界の実態を数字で追うことで、業界全体の動向に気付けます。
美容室を開業したあとも、業界の動向やトレンドに注目しながら、打てる対策は早めに打つようにしたいですね。
美容室は規模によって儲けが異なる
どのような美容室を経営したいのか、具体的なイメージはできていますか?
美容業は、小規模経営と中大規模経営の「経営の二極化」が進んでいます。
美容室経営といっても、そのスタイルや規模はさまざまです。
ここでは、経営規模による美容室の特徴について解説します。売上や儲け(利益)、従業員数などはそれぞれ違いますから、経営のイメージをふくらませながら理想のスタイルを見つけましょう。
小規模経営(1人、家族経営)
小規模経営は、1人美容室や家族経営など、少ない人数で小規模の美容室を運営する方法を指します。必要な経費を低く抑えられるので、うまくいけば雇われていたときより給与が増えるかもしれません。
▼ 小規模経営の特徴
- ・開業資金を低く抑えられる
- ・人件費、家賃など必要な経費が少ない
- ・理想的なお店作りができる
- ・1日に受けられる客数が限られる
- ・中大規模と比べて集客が難しい
小規模経営の良さは、少ない費用で始められることです。
「いずれはお店を大きくしたい」「多店舗展開したい」という場合でも、まずは小さい店舗から始めて、利益が出てから大きくする方法もあるのではないでしょうか。
少ない人数ですべての業務をこなす大変さはありますが、自分の店舗で理想とするサービスを提供できるのは魅力です。
あまりお金をかけられなくても、現代はSNSを活用した集客方法もあります。
工夫と根気次第で、細く長い経営を目指しましょう。
中大規模経営(多店舗展開)
中大規模経営は、個人経営者や法人がいくつもの店舗を運営する方法を指します。
働くスタッフが多い分、仕事を分担することができ、より多くのお客さんに幅広いサービスを提供できます。
▼ 中大規模経営の特徴
・開業資金、必要経費の金額が大きい
・仕事を分担でき、1つの業務に集中できる
・人気のある好立地に店舗を構えられる
・スタッフの教育、雇用管理が必要
・さまざまな集客方法でアプローチできる
中大規模経営の良さは、1店舗だけでは難しかったことが、多店舗展開により実現しやすくなる点です。
市場規模におけるシェアの獲得、大きな売り上げや儲け(利益)を得る、大量仕入れで原価を下げたり、いろいろなサービスを取り入れたりすることも可能でしょう。
経営者としての責任は重くなりますが、より多く人にサービスを提供できる魅力があります。大きな野望と周囲からの信頼を得て、儲かる美容室を目指しましょう。
フリーランス美容師の存在
経営とは少し趣旨が異なりますが、近年、「フリーランス美容師」としてフリーで活動する美容師が増えています。
フリーランス美容師は、シェアサロンや面貸し(ミラーレンタル)を活用して、お客さんにサービスを提供しています。
店舗や設備にかかる費用を抑えられるため、少ない費用で独立・開業が可能です。
美容師の働き方も多様化し、自分に合った働き方を見つけやすくなっています。
フリーランス美容師として独立し、技術だけでなく営業力を身につけてから美容室経営に参入する人も出てくるかもしれません。
業界の動向の1つとして、ぜひ知っておきましょう。
美容室経営で失敗しないための対策とは?
顧客の減少や苦しい資金繰りから逃れられず、閉店・廃業する美容室は確実に存在しています。
美容室を長く経営するには、客数を確保して利益を求め続けなければいけません。
そこで、美容室経営で失敗しないための対策として3つのポイントを解説します。
1.客目線のサービス向上を図る
2.労働環境を良くする
3.運転資金を確保しておく
開業直後からすべて対策するのは難しくても、少しずつ取り入れて理想の店舗作りを目指しましょう。
01 客目線のサービス向上を図る
美容室は、顧客とのコミュニケーションが必要なサービス業です。
「あまり話しかけられたくない」「静かに過ごしたい」と思う人が居ても、コミュニケーションが取れなければ適切なサービスを提供できません。
特に、カウンセリングや接客は、顧客の満足感を高める重要なポイントです。売上やリピート客の獲得につながる部分ですから、意識してコミュニケーション能力を高めましょう。たとえば、顧客カルテを導入し、1人1人に合ったサービスを模索する方法もあります。
また、店舗のIT化は避けて通れません。以下のようなIT化は、今後もさらに必要になります。
- ✔インターネット予約
- ✔SNSを活用した集客
- ✔独自のホームページを開設
- ✔キャッシュレス決済の導入
- ✔雑誌のタブレット化
客層や地域によっては、チラシや広告、電話予約などが十分に機能するところもあるでしょう。
ターゲットとする客層のニーズや業界のトレンドを捉えながらサービス内容を見直し、改善することが大切です。
02労働環境をよくする
経営において、働きやすい環境作りは非常に重要です。
労働環境を良くし、スタッフのモチベーションを引き出すことは、結果的にアットホームで働きやすい店舗運営につながります。
美容業界は、離職が多い業種といわれています。特に、多くの美容室を運営する中大規模経営において「人手不足・求人難」は大きな問題です。
▼ 人手不足による経営の問題点
- ・人手不足により多くの客数を入れられない
- ・スタッフの労働時間が増加する
- ・スタッフの教育・指導まで手が回らない
人手不足は、スタッフの労働条件を悪化させる原因になります。
業務に追われていると、スタッフ同士のコミュニケーションも不足するでしょう。
スタッフが定着しないことで、顧客にどこか落ち着かない印象を与えるかもしれません。
また、求人を出すにも費用や時間がかかります。店舗運営に支障が出ることから、人材を確保してスタッフが長く働ける環境作りを徹底しましょう。
これからの経営は、顧客のみならず、経営者もスタッフも幸せになる道を模索することが大切です。
03運転資金を確保しておく
安定した美容室経営を続けるには、余裕のある資金確保が欠かせません。
出費の優先順位を考え、運転資金を確保しておくことは経営者の重要な役割です。
特に、開業してすぐは思うような売上が出ません。
黒字化するまでの期間に資金が不足しないよう、どこに重点を置いてお金をかけるかよく考える必要があります。
▼ 開業時にかかる出費の例
- ・店舗の内外装
- ・セットする椅子、シャンプー台
- ・材料の仕入れ
- ・広告宣伝費
- ・スタッフの人件費など
内装にこだわり過ぎたり、高い賃料が発生する物件にしたりと無理をすると、売上が出ても経費を払えないといった収支のバランスが崩れる原因になります。
小さく始めて徐々に大きくする、利益が出てから費用配分を増やすなど、手元の運転資金と照らし合わせながら賢く使いましょう。
儲かる美容室経営に向けて今からできること
美容室を経営するからには、うまく軌道に乗せて長く続けたいですよね。
儲かる美容室経営に向けて、今からできる4つのことを解説します。
1.美容室の経営・開業の動機をはっきりさせる
2.お金にシビアになる
3.競合店の調査をする
4.経営・マーケティングについて学ぶ
美容師として技術を高めるだけでなく、これからは経営者目線も必要です。
1つずつチェックしながら、経営者としての一歩をふみ出しましょう。
01 美容室の経営・開業の動機をはっきりさせる
何のために美容室を経営・開業したいのか、動機をはっきり言えますか?
経営に対する考えや熱意は、融資審査の面接でも聞かれることがあります。
美容室の経営は、計画通りに進むとは限りません。
そもそも現段階で開業できるのか、実現可能な事業なのかを確認する意味もこめて、事前準備は入念に行いましょう。
▼ 開業に向けてチェックするポイント
- ✔事業を続けていく自信はあるか
- ✔家族の理解はあるか
- ✔開業する場所は決まっているか
- ✔セールスポイントはあるか
- ✔自己資金は準備しているか
※参考 日本政策金融公庫「創業の手引+(平成31年4月)」
開業のための融資を受ける際、融資をしてくれる機関に「事業計画書(創業計画書)」を提出する必要があります。事業計画書の内容は、儲かる美容室になるために最低でも上記のポイントをまとめなければいけなません。
細かな事業計画書の内容、融資審査の面接に不安があれば、実績のある専門機関に相談するのがおすすめです。
02 お金にシビアになる
経営者の重要な仕事の1つに、資金繰りがあります。
必要な部分にお金を遣いながらも利益を求め続けなければ、経営は成り立ちません。
売上や経費、利益を細かく把握して、事業を進める力が必要です。
日頃のお金の管理から、見直せるポイントがないかチェックしましょう。経営者として、お金にシビアな視点を持ち続けたいですね。
- ✔光熱費等の支払いを忘れずに行う
- ✔クレジットカードのキャッシングは利用しない
- ✔消費者金融を利用しない
- ✔自己資金をコツコツ貯める
美容室を開業するには、運転資金の調達が必要です。融資を受けるには、ある程度の自己資金が求められます。今からでもコツコツ貯めて、開業に向けた準備を始めましょう。
03 競合店の調査をする
ライバルを知るには、市場調査が欠かせません。市場調査とは、競合他社や顧客に対する情報を集めて分析すること。自身の強みを見つけるためにも、必ず行いましょう。
経営しようとしている美容室の、セールスポイントは何ですか?全国に約25万店舗もある美容業界で生き残るには、どのように差別化をするかをしっかり考えます。
- ✔オーガニックに特化した店舗
- ✔ヘッドスパやマッサージの導入
- ✔カフェ併設
- ✔専門性を高める(カラー、セットなど)
- ✔営業時間(早朝、深夜)
以上のように、全国にはさまざまな美容室があります。また、高齢者や子育て世代など客層に合ったサービスも有効です。
- ✔高齢者向け:送迎、訪問サービス
- ✔子育て世代:託児、キッズスペース併設など
自分の美容室を選んでもらうにはどうすればいいのか、提供できるサービスや強みなどをしっかり考えていきましょう。
04 経営・マーケティングについて学ぶ
儲かる美容室を経営するには、経営やマーケティングについて学ぶことが大切です。美容師として技術を高めつつ、経営者に必要な知識も身に付けましょう。
「1人美容室だから必要ない」と思う人もいるかもしれませんか、経営の規模に関わらず知識は武器になります。学んだ知識を実際の経営で実践しながら、儲かる美容室を目指すのです。
▼ 美容室経営についての学び方
- ・本で学ぶ
- ・インターネットの情報を得る
- ・勉強会、セミナーに参加する
- ・先輩の経営者から話を聞く
現代は変化のスピードが早く、美容業界におけるトレンドの移り変わりも早くなっています。流行を取り入れても、それがいつまで続くかわかりません。
経営やマーケティングの勉強は、すでにある成功方法を学ぶことになります。自身の経験だけでは得られない知識が、成功への近道になるかもしれません。変化のスピードについていくためにも、意識して学び続けたいですね。
美容室経営の実態を知って儲かる美容室を目指そう
美容業の市場規模は、人口減少が進むにつれ縮小すると言われています。
開業費用を低く抑えられるため参入しやすい業種ではありますが、勢いで経営・独立開業するのは危険です。
美容業界の実態を知って、自身の経営に活かしましょう。この記事では、美容室経営で失敗しないための対策として、以下の3つのポイントを解説しています。
- ✔客目線のサービス向上を図る
- ✔労働環境を良くする
- ✔運転資金を確保しておく
「また利用したい」と思えるサービスや店舗作りは当然のことながら、従業員の労働環境、運転資金の確保など、経営者としての役割も果たさなければいけません。
美容室経営に向けた融資獲得の相談、詳細な事業計画書の作成、審査面接へのアドバイスなど、不安な点は実績のある専門機関に相談するのがおすすめです。
儲かる美容室経営に向けて、今からできることを1つずつ積み重ねましょう。成功をお祈りしています。