美容室の開業は保健所への届出が必須!手続きで注意が必要なポイントは?
美容室の開業を計画していると、「保健所への届出は必要?」と気になる人も多いのではないでしょうか。
美容室開業の際、保健所への届出は必須になります。
また、保健所への届出は、必要書類の提出だけでなく、事前相談や立入検査もあります。
スムーズに手続きを行うために、届出の流れも把握しておくと良いでしょう。
この記事では、美容室を開業する際の保健所への届出の書類や手続き、立入検査の内容について、詳しく解説していきます。
※美容師を開業する際に必要な資格は、下記の記事でも詳しく説明しています。
美容室開業の保健所への届出の期限と流れ
美容室の開業の際には、保健所への届出が義務付けられており、保健所の検査に合格しなければ、開業はできません。
美容室の開業前に、必ず管轄の保健所に届出を行いましょう。
管轄の保健所については、厚生労働省のホームページから確認できます。
保健所への届出は、次のような流れで進めていきます。
1.事前相談
2.必要な書類の提出と手数料の支払い
3.立入検査
4.保健所から確認証を取得
美容室の開設前に必要な届出ですので、手続きの期限や流れを把握しておきましょう。
事前相談
内装業者から平面図(内法での寸法や設備の配置がわかる計画図面)をもらったら、保健所への事前相談にいきましょう。
図面上で、基準をクリアできているかの確認がされ、もし基準を満たしていないところがあれば、改善の要求がされます。
工事の後や着工してから事前相談に行った場合、すでに工事をした場所を直すのに、時間や費用が発生してくるリスクがあります。
そういったトラブルを防ぐために、美容室の開業に携わったことのある内装業者を選ぶのもポイントです。
必ず工事着工前に、内装業者と保健所の両方と事前相談をして、無駄な時間や費用が発生しないようにしましょう。
必要な書類の提出と手数料の支払い
工事が終わったら、美容室の開設から14日~10日前までに、必要書類と検査手数料を準備して、保健所に届出に行きましょう。
必要な書類が多いので、管轄の保健所に相談しながら書類を揃えていくと確実です。
必要な書類について、詳しくは下記で解説しています。
立入検査
保健所の職員が、実際に店舗を訪問し、確認検査が行われます。
スムーズに開設できるように、開設予定の1週間前を目安に、日程の調整をしましょう。
届出の図面と相違がないか、美容室の基準を満たしているか、などのチェックがあります。
立入検査で確認する内容については、下で詳しく解説します。
保健所から確認証を取得
立入検査で基準を満たしていれば、保健所から許可が下り、確認証が発行されます。
保健所から連絡がありますので、速やかに確認証を受け取りに行きましょう。
美容室開業の際の保健所への提出書類や手数料は?
ここからは、美容室開業の際の届出や手続きについて、個別に詳しく解説していきます。
保健所への届出は、開設届だけでなく、他にも複数の書類や検査手数料が必要です。
書類の準備不足や、期限を過ぎてしまうことがないように、しっかり確認しておきましょう。
美容室開業の際に保健所に届出が必要な書類
保健所への届出には、次の書類が必要になります。
- ✔開設届
- ✔施設の位置図
- ✔施設の平面図
- ✔施設の構造設備の概要
- ✔従業者一覧
- ✔美容師免許(全員分)
- ✔管理美容師の修了証
- ✔医師の診断書(結核、皮膚疾患について記載した発行後3ヶ月以内の物)
- ✔外国人登録証明書(外国人のみ)
- ✔登記簿謄本(法人のみ)
念のために、他にも提出するものがないか、事前相談のときに保健所で確認しておくと、確実でスムーズに手続ができます。
開設届だけでなく、複数の書類が必要になりますので、1つずつ計画的に準備を進めていきましょう。
開設届
開設届は、管轄の保健所やホームページから入手可能です。
開設届には次のような項目を記入します。
- ✔開設者の氏名、住所
- ✔施設名称
- ✔所在地
- ✔開設予定日 など
税務署へ提出する開業届とは違いますので、間違わないように注意しましょう。
施設の位置図
施設周辺の地図が必要ですので、美容室の場所がわかる地図を、インターネットから印刷しておきましょう。
施設の平面図
施設の平面図は、依頼している内装業者から入手しましょう。
内装業者や保健所の職員と、設備の配置について相談しながら作成します。
施設の構造設備の概要
施設の構造設備の概要の書類は、事前相談の際に保健所で入手するか、ホームページからダウンロードしましょう。
次のような項目を記入する欄があります。
- ✔建物の規模
- ✔セット面
- ✔シャンプー台の数
- ✔窓、証明の有無
- ✔消毒方法 など
こちらは、主に衛生面をチェックするための書類です。
従業者一覧
保健所から入手、またはホームページからダウンロードできる従業者の名簿です。
従業者全員分の次の項目を記入します。
- 氏名
- 美容師免許の取得年月日
- 管理美容師の取得年月日
- 免許番号
管理美容師の免許は、持っている人の分だけ記入すれば大丈夫です。
美容師免許(全員分)
従業者一覧の書類とあわせて、確認のための美容師免許の本証も提示する必要がありますので、必ず持参しましょう。
管理美容師の修了証
管理美容師の修了証も持参してください。
開業する美容室に、美容師が常時2名以上いる場合は、管理美容師の資格を持つ人が1人は必要です。
医師の診断書(結核、皮膚疾患について記載した発行後3ヵ月以内の物)
伝染性皮膚疾患や、結核などにかかっていないかを証明するために、発行後3ヵ月以内の意思の診断書を提出します。
従業者一覧に記入した、美容師免許を持っている従業員全員の診断書を準備しましょう。
外国人登録証明書(外国人のみ)
外国人の方は、外国人登録証明書を提出しましょう。
登記簿謄本(法人のみ)
法人で美容室を開業する人は、登記簿謄本も提出する必要があります。
検査手数料について
検査手数料については、管轄の保健所によって異なりますが、一般的には2万円前後になることが多いです。
事前相談する際に、あわせて検査手数料の確認もしておきましょう。
美容室開業の際の保健所立入検査でチェックされるポイント
書類の提出が終わると、事前に決めた日程に保健所の職員が美容室を訪れて、立入検査が行われます。
美容師が扱う髪の毛は体の一部ですし、シャンプーのときなどに体に直接触れる場面もあります。そのため、衛生管理状況や消毒設備が十分に整っているかの確認のために、検査が必要になっています。
保健所の立入検査でチェックされるポイントを確認しておきましょう。
美容室開業の保健所立入検査で確認されること
立入検査では次のような項目を確認されます。
- ✔作業室の面積と椅子の台数
- ✔床の素材
- ✔洗髪設備
- ✔待合スペースとの区画
- ✔従業員の控室
- ✔採光・照明の状況
- ✔換気設備の構造
- ✔毛髪箱・汚物箱
- ✔消毒設備・消毒場所
- ✔消毒済器具類の保管場所
管轄の保健所によって、若干異なる可能性がありますので、事前に保健所で確認しておきましょう。
一般的な基準を1つずつ解説していきます。
作業室の面積と椅子の台数
作業面積と椅子の台数が、基準を満たしているかの確認です。
- ✔1作業室の面積は、内法で13m2以上であること
- ✔個室を設ける場合は、1室ごとに13平方メートル以上あること
- ✔天井の高さは、床面から2.1m以上であること
- ✔作業所の面積9.9㎡につき、設置できる椅子の数は4台までになっているか(それ以上は23.1㎡までは3.3㎡毎に1台、23.1㎡以上からは3.3㎡毎に2台まで増やせる)
作業椅子には、セット椅子、シャンプー椅子、コールド待ち椅子等が含まれます。
床の素材
床の素材は、不浸透性材料(コンクリート、タイル、リノリウム、板等)を使用することが基準になっています。
たたみ、カーペットなどは適さない素材ですので注意しましょう。
洗髪設備
洗髪のための流水式の設備を設けることが基準です。
施術内容によって、もしも洗髪設備を省略する場合は、保健所に相談しましょう。
待合スペースとの区画
客待場所は次の2つの基準があります。
- ✔入口付近で作業室を通過しない場所に設けること
- ✔作業室との間に0.9m以上のつい立てや壁などで区画等を設けること
邪魔にならないところで、作業場所と明確に分ける必要があります。
固定したつい立て、動かせない家具、壁や扉で区切るのが望ましく、固定していないつい立て、カーテン、観葉植物などは適していないので注意しましょう。
従業員の控室
作業室と明確に区画した、従業員の控室(バックヤード)が必要です。
採光・照明の状況
100ルクス以上の作業面照度が基準となります。
換気設備の構造
換気を充分にできる換気設備の設置が必要です。
室内炭酸ガス濃度が0.5%以下などの基準がありますので、しっかり換気できる設備を整えておきましょう。
消毒設備・消毒場所
消毒場所はトイレ、洗髪とは別に、手洗いや洗浄ができる流水式の設備を、設置する必要があります。
消毒設備は、以下のようなものがチェックの項目となっています。
消毒液 | 逆性せっけん(塩化ベンザルコニウム溶液)、次亜塩素酸ナトリウム溶 液、消毒用エタノールなど。 |
消毒器具 | 紫外線消毒器・蒸気消毒器など。 |
メスシリンダー | 消毒液を使う際に測るための道具です。希釈に使う水を測るための大き目の500mL~1Lと、消毒薬 を測る小さ目の50mL~100mLの2本を準備します。 |
薬液容器 | 消毒液に器具を付けておくためのフタ付きの容器です。タッパーなどを準備しましょう。 |
乾燥器 | 水切りかごなど、消毒したものを乾かすためのものです。 |
消毒済器具容器 | 消毒した器具を入れる容器です。「消毒済」と標示しておきましょう。 |
洗浄済タオル格納棚 | フタ付きの収納ケースや、扉付きの戸棚など、ほこりや生き物の侵入を防げるタオルの保管場所が必要です。 |
未洗浄タオル容器 | かごやバスケットなど、未洗浄のタオルを入れる容器を準備しましょう。 |
毛髪箱・汚物箱 | 必ずフタ付きの毛髪箱・汚物箱を設置しておきましょう。 |
救急道具 | 万が一の外傷に備え、救急箱や衛生道具などを準備しましょう。 |
消毒液や消毒器具は、実際に実務で使用する物を準備しましょう。
消毒済器具類の保管場所
上述した消毒器具類を保管しておくための場所を、確保しておく必要があります。
立入検査では、消毒の方法や手順も確認の対象
立入検査当日は、消毒設備の確認だけでなく、消毒方法や手順も、実際にやってみるように要求されます。
立入検査の時点で美容室の開業目前ですし、実務のシミュレーションを兼ねて、実際に何度か消毒器具の使用方法の確認や、手順のリハーサルをしておきましょう。
美容室開業で保健所の他に必要な届出の種類
美容室を開業する際は、保健所だけでなく、次のような場所への届出が必要になります。
期限までに、忘れずに届出を済ませるようにしましょう。
届出場所 | 届出するもの | 期限 |
税務署 | 開業届など | 開業後、1ヵ月以内 |
都道府県税事務所 | 事業開始(廃止)等申告書 | 開業後、速やかに |
消防署 | 条件によって異なる | 消防署へ要確認 |
労働基準監督署 | 労働保険 保険関係成立届 | 雇用した翌日から10日以内 |
労働保険 概算保険料申告書 | 雇用した翌日から50日以内 | |
公共職業安定所(ハローワーク) | 雇用保険適用事業所設置届 | 事業所の設置した翌日から数えて10日以内 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 被保険者の資格取得の翌月10日まで | |
年金事務所 | 社会保険関係 | 会社設立から5日以内 |
1人で個人事業主として美容室を開業する場合であっても、税務署、都道府県税事務所への届出は必須です。
消防署への届出も、必ず相談するようにしましょう。
他の美容師を雇用する場合は、労働基準監督署、公共職業安定所への届出も必要になってきます。年金事務所での社会保険の手続きは、法人なら強制ですが、個人事業主なら任意での加入になります。
美容室を開業する際には、保健所への届出だけでなく、税務署や都道府県税事務所への届出も必要だと認識しておきましょう。
美容室を開業する際は、まず管轄の保健所への事前相談を
美容室の開業をする人は、全員保健所への届出が必要です。
書類の提出だけでなく、事前相談から立入検査が終わり、許可が下りて確認証をもらうまで、約1ヵ月くらいの時間がかかりますので、余裕を持って準備していきましょう。
また、立入検査では設備だけでなく、消毒する備品の使用方法や手順もチェックされますので、実際の仕事の流れを確認しておくことも大切です。
届出の手順が多く、難しく感じるかもしれませんが、保健所と相談しながら1つずつ準備していけば、許可証を取得できます。
保健所への届出が遅れると、工事が終わっていても美容室が開設できませんので、内装業者から平面図を取得したら、早めに保健所への事前相談に行くようにしましょう。