美容室の開業に必要な貯金の額は?金額以外のポイントも解説
「いくら貯金があれば独立できるの?」
「貯金が少なくても美容室を開業できるのかな?」
いつか独立して美容室を開業したいと考えている場合、一番気になるのはお金のことですよね。
美容師が独立開業するにはある程度の貯金が必要です。
今回は、必要な貯金額の目安を解説しながら、そもそも開業資金は何にどれくらい必要なのか、貯金で足りない分はどう調達するのかについても説明します。
美容室の独立開業をかなえるために、できるだけ早い段階で計画的に金銭面の準備をしましょう。
美容師の独立開業に必要な資金
独立して美容室を開業する場合、そもそもどのくらい資金が必要なのでしょうか。創業支援などの融資をする日本政策金融公庫によると、美容室の開業には平均的に総額1,000万円程度の費用がかかっています。
独立開業にかかる主な費用
開業費用総額の主な内訳は以下のとおりです
【新装のサロン開設費用総額(合計940万円)の内訳】
設備資金(777万円)
- ✔不動産賃料(104万円):数カ月分の家賃、仲介手数料など
- ✔内装工事(476万円):電気、ガス、水道、空調など
- ✔美容機材、備品(197万円):シャンプー台、セット用の椅子、ドライヤーなど
運転資金(150万円)
- ✔商品仕入れ:シャンプー、トリートメント、カラー材など
- ✔家賃、光熱費、開店の宣伝費、人件費など
その他(13万円)
- ✔営業、保証金、FC加盟金など
なお実際、美容室の立地や物件の広さ、どこまでこだわるかによって内訳や金額は変わってきます。
一つの目安として知っておくと、どこを節約できそうか、どこが増えそうなかなどを事前に把握したり、検討したりできます。
例えばできるだけ費用を押さえたい場合、内装工事費を減らすために居抜き物件にする、中古設備やリースを検討するなど、開業費用を下げるパターンを考えられるでしょう。
貯金だけで独立開業する人はごく少数
開業費用総額や内訳の目安をお伝えしましたが、貯金のみで独立開業する人はごくわずかです。
基本的には創業融資を受けて開業資金を調達するべきです。
実際、美容室を経営すると計画時よりもお金がかかるケースがほとんどで、7割の美容室は開業してから黒字化までに半年以上かかっているからです。
そのため余裕を持って経営できるように、融資を受けることは必須です。
なお美容師が独立開業する際、融資を受けられる先は以下の2つです。
そのうち日本政策金融公庫は、保証人や保証料が不要で融資実行までの時間が短いなど好条件で、創業融資に最も多く利用されています。
日本政策金融公庫
国が100%出資している政策金融公庫。これから創業する人や既に事業をしていて資金が必要な人に融資する。
民間の金融機関+信用保証協会
民間の金融機関から融資を受けやすいように、公共機関である信用保証協会が保証人としてサポートする。中小企業や美容室などの小規模事業者に融資する。
美容師の独立開業に貯金はいくらあればよいのか?
では創業融資を受けて美容師が開業する際、自己資金となる貯金はいくら必要なのでしょうか。
融資を受ける際は自己資金要件がある
大前提として融資制度上、融資に申し込むためには自己資金要件があります。
美容室の開業で主に利用される、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の場合、自己資金が開業資金総額の10分の1以上であることが条件です。
例えば1,000万円の開業資金が必要な場合、最低限100万の貯金が必要です。
ただし100万円あれば必ずしも1,000万円を借りられるという意味ではありません。
実際のところ開業資金総額の5分の1~3分の1の自己資金が求められます。
融資制度上の自己資金要件は申し込みの最低条件に過ぎないと捉えるとよいでしょう。
平均的に200万~300万円の自己資金が必要
実際に開業した美容室の融資事例を見ると、平均的に200万~300万円は用意しているケースが多いです。
また日本政策金融公庫の調査データによると自己資金の平均額は268万円で、サロン開業資金の調達先の26%を占めています。
自己資金要件に関わらず、実際は開業資金総額の5分の1~3分の1の自己資金が必要とされる実態も示しているでしょう。
【サロン開設資金の調達先(合計1,031万円)】※不動産購入した場合を除く
・金融機関等:670万円(65%)
・自己資金:268万円(26%)
・親族:78万円(7.6%)
・その他:15万円(15%)
出典:日本政策金融公庫
もちろん、必要とする開業資金が高ければ高いほど自己資金となる貯金も必要です。
自己資金に見合った融資を受ける必要はありますが、平均的な開業資金の融資を受ける際の目安になります。
自己資金は多ければ多い方がよい
なお融資制度上の自己資金要件や平均的な金額をクリアしていれば十分というわけではなく、 自己資金となる貯金は多ければ多いほどよいでしょう。
創業融資を受ける際、自己資金がどれだけあるのかが資金調達の鍵だからです。
融資するとしては、返済してもらえるのかリスクを判断する必要があります。
その際、自己資金の金額は真剣に開業を考えていること、開業に向けて努力していることの現れです。貸すリスクが低いと判断されれば、より多い融資を受けられる可能性が高くなります。
また自己資金の割合が高いほど毎月の返済が少なくなるため、経営者にとってもメリットです。
貯金の金額以外に重要なポイント
貯金の金額以外に、実はお金の貯め方も重要です。
開業時期のめどがたっていなくても、貯め方のポイントを押さえたうえで早めに準備することをおすすめします。
自己資金をコツコツ貯金しているか
まずはできる範囲で早めにコツコツ貯め始めましょう。
少しずつでも地道に貯めていること自体、返済リスクを判断される際に有利となるからです。
計画性がなかったり思いつきで開業を決めたように見えたりすると、リスクが高いと判断されてしまいます。コツコツ貯めていることは、前々から準備している姿勢の証拠です。また計画的に行動していること自体が、開業後も健全に経営できることの証明になります。
始めは少額でも、毎月の給与からコツコツ貯めていきましょう。
貯金したお金の経緯を示せるか
また、コツコツ貯めている経緯を通帳などで提示できるかどうかも重要です。
開業に向けてどれだけ準備してきたか、客観的な証拠として必要だからです。
実際融資申込の際は、自己資金を準備している口座の通帳を提出します。
給与の入金や使って出ていったお金など、残っている貯金額以外に貯金してきた経緯も重要です。
直近半年分の提示は必要となるので、 できるだけ早い段階から積立預金をしておくとよいでしょう。
また口座で貯めているお金以外に、たんす貯金や親からもらうお金も客観的な証明が重要です。
たんす貯金
たんす貯金は口座に預けず自宅で貯めているお金を指します。例えば現金で受けた給与が含まれますが、客観的な証拠がないと自己資金として認めてもらえません。
通帳記録に残して提示できるように、事前に口座で管理する必要があります。
親から受けたお金
親から受けたお金は自分の口座でコツコツ貯めてきたお金ではないですよね。しかし場合によっては、口座で貯めたお金と同様に自己資金として認めてもらえます。
そのためには、もらったお金なのか借りたお金なのかを証明できる書面を残すことが望ましいです。
退職金も自己資金になる可能性がある
今の職場で退職金があれば、貯金と同様に自己資金に含められる可能性があります。
なお通常は融資申込時点で退職金を受け取っていないため、職場の規定などから証明できるかどうかが重要です。
貯金以外に退職金があると自己資金が増え、借りられる金額にも有利に働きます。退職金制度がある場合、あらかじめ職場に確認しておくようにしましょう。
独立に向けてまずは200万円をコツコツ貯めよう
美容室の創業融資に申し込む際、自己資金要件として開業資金の10分の1以上の貯金が必要です。
なお自己資金要件はあくまで最低条件で、実際は5分の1~3分の1程度の金額が求められます。実例や過去の調査データからも、美容師が独立開業に必要な貯金額は200万~300万を一つの目安にするとよいでしょう。
また貯金額の大きさだけでなく、計画性を持ってコツコツと貯めているか、口座の通帳などで客観的に証拠で示せるかどうかも重要なポイントです。
美容室の開業を考えている場合は、早い段階からまずは200万円をコツコツ貯めましょう。