開業資金ゼロでも美容室を始められる?低リスクで安く開業する方法を解説
「開業資金ゼロでも美容室を開業できる?」
「開業資金をなかなか準備できない場合はどうしたら良いの?」
美容師で独立開業したいけど今の自己資金に不安がある、という方は多いのではないでしょうか。中には、資金ゼロで美容室を開業できた話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
しかし実際のところ、資金0円で美容室を開業するのは非現実的です。
今回は、
✔開業資金ゼロでも美容室の開業を考えられるのか
✔開業に向けてどのような対策を考えたらよいのか
について説明します。
開業を考えている場合、早めの情報収集や準備をすることは重要です。
本記事を参考に、今からできることを検討してみてくださいね
資金ゼロでも美容室を開業できるのか?
そもそも資金ゼロの状態から美容室を開業できるのでしょうか。
貯金が0円でも開業できたという実例は例外的にありますが、 自己資金がまったく不足している状態で開業するのは非現実的です。
開業時の資金は融資を受けて資金調達するのが一般的ですが、その際に一定の自己資金要件が求められるからです。
例えば美容室の開業でよく利用される日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の場合、自己資金要件は10分の1と定められています。
つまり制度上、申込時点で資金0円だとそもそも申し込む資格はありません。
また自己資金要件はあくまで最低条件で、実際は希望額の融資を受けるには5分の1~3分の1の自己資金が求められます。
そのため自己資金ゼロで融資を受けるのは問題外と言えるでしょう。
なお、日本政策金融公庫の融資制度の中には自己資金要件が定められていない「中小企業経営力強化資金」があります。
この制度は自己資金要件がない一方、外部の専門家など認定経営革新等支援機関の指導や助言を受けることが利用条件です。
参照:日本政策金融公庫「中小企業経営力強化資金」
そのため大前提として、認定経営革新等支援機関が事業計画内容などについて認定しないと融資申込ができません。
制度上は自己資金ゼロでも融資申込はできますが、実際は認定経営革新等支援機関から開業の準備不足を指摘され、融資申込を却下される可能性が高いです。
いずれの制度にしろ、開業準備不足と言える状態では融資を受けられる可能性は低いと考えた方がよいでしょう。
できるだけ低リスクで安く開業する方法
では現時点で資金ゼロの場合、今からどのような対策をすべきでしょうか。
できるだけ低リスクで安く開業を実現するには、5つの方法があります。
1.コツコツ資金を貯める
2.助成金・補助金の活用を考える
3.開業費用を節約する
4.一人で独立開業する
5.共同経営を視野にいれる
下で1つずつ順に解説をします。
01 コツコツ資金を貯める
生活費をまかないながら資金を貯めるのは大変ですが、少しでも多くの自己資金を用意することは重要です。
どんなに開業費を抑えても、まずは申込条件をクリアする自己資金がなくては融資を受けられません。
また融資を受ける際は自己資金額の多さだけでなく、開業に向けて計画的に準備しているのか、開業するために努力しているのかという点でも判断されます。
そのため給与の中から少額でも、コツコツと貯め始めてみるのがおすすめです。
なお、自分の貯金以外に自己資金として認められるものがないかも早めに把握しておくとよいでしょう。
前述のように自己資金が増えることは、実際に融資を受けられる金額に影響するからです。
例えば以下のようなものは自己資金に含まれる可能性があります。
✔配偶者の貯金
✔親族からの援助
✔生命保険などの解約返戻金
✔現職の退職金
ただし自己資金として認められるためには、お金の経緯や返済不要であることの客観的な証拠が重要です。
提示できるものがあるかどうかも早めに確認しておくと、より確実に準備ができます。
02 助成金・補助金の活用を考える
助成金や補助金が利用できそうか検討しておくことも対策の一つです。
助成金や補助金は国や地方公共団体から給付される返済不要なお金のため、開業時や開業後の資金の足しになります。
一例として、美容室の開業に使える助成金・補助金には以下のようなものがあります。
小規模事業者持続化補助金
✔最大50万円までの補助を受けられる
✔開業時のホームページ、チラシ作成、広告費などにも利用できる
IT導入補助金
✔30万円~450万円の補助を受けられる
✔美容室経営をスムーズにするITツールの導入に利用できる
キャリアアップ助成金
✔雇用者のうち非正規社員を対象とした助成金
✔正社員化コース、人材育成コースなど要件が異なった複数コースがある
なお助成金や補助金は開業準備をすれば必ず利用できるわけではなく、知っている人にしか支給のチャンスはありません。
毎年多くの募集があり時期によっても申し込みできるものが異なるため、常に情報収集したり専門家に相談したりすることが必要です。
助成金や補助金は融資で有利に働くものではないですが、開業資金を補完してくれるため活用を視野に入れておくとよいでしょう。
03 開業費用を節約する
開業費用の節約を考えることは、開業リスクを下げることにつながります。
自己資金に見合った開業資金になれば融資も通りやすく、返済の負担も少なくて済むからです。
日本政策金融公庫のデータによると、美容室の開業にかかった費用のうち約半分は内装工事が占めています。内装工事の費用を抑えられれば大きな節約になるため、例えば居抜き物件を検討するのも一案です。
また同データによると、開業費用の約10%は店舗敷地の賃借費用にかかっています。
例えば自宅の一部をサロンとして改装する選択肢があれば、賃借費用を節約でき内装工事費用だけで済むことになります。
どれだけ節約できるかは場合によりますが、居抜き物件の利用や自宅での開業など開業費用を抑えられるパターンを考えておくとよいでしょう。
04 1人で独立開業する
1人で独立開業した場合、費用面や経営面において低リスクで開業できます。
例えばスタッフを雇うと、給与以外に交通費などの福利厚生や研修費用などが発生します。
また実際に経営してみると必要以上に費用がふくらんだり、意見の食い違いによるトラブルが怒ったりリスクが高くなりがちです。
人を雇わない場合、費用を抑えられるだけでなく自分で全てをコントロールしやすいため、リスクを抑えて開業できます。
その一方、1人で経営すると生産性や売り上げが頭打ちになる可能性はあります。
自己資金がなくてコストやリスクを抑えるにはよいですが、長い目でみた場合の計画も考慮しておくとよいでしょう。
05 共同経営を視野にいれる
美容室を共同経営するのも低リスクで開業できる方法の一つです。
共同リスクの場合、自分と共同経営者の自己資金を合算できるため資金面でのリスクを低減できるからです。
例えば、極端に言えば自分は貯金ゼロでも相手に貯金があればそれを自己資金として融資申込ができます。
ただし1人で経営する場合と比べて、経営方針の意見の食い違いや金銭トラブルが発生する可能性はあります。
資金調達のメリット以外にも、よく考える必要はあるでしょう。
融資審査に落ちると再申請が通りにくいため要注意
資金がなくても開業したいという情熱があっても、融資審査を受けるには慎重に臨む必要があります。
融資審査の再申請について正式な決まりはないですが、一度審査に落ちるとすぐに再申請を通すのは難しいからです。
審査でなにがダメだったのかによりますが、理由によっては
・再申請を通すのはほぼ不可能
・再申請するとしても原則半年はあけないと受け付けてもらえない
といった場合があります。
例えば融資を受けられないのではなく、自己資金に対する融資希望額が高いという指摘を受けた場合、原因の説明と資金計画の見直しで再度受け付けてもらえる可能性はあります。
しかし個人情報に問題がある、資金を全然用意できていないといった場合、根本的に改善の見込みがないと判断されたら再申請できる可能性は低いです。
申し込んだ融資が受けられなかったり再申請や減額になったりすると、時期や内容など計画が大幅に変わってしまいます。自己資金をほとんど準備できていない状態で見切り発車せず、計画的な準備が重要です。
開業融資に必要なポイントは、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せて読んでみてください。
開業資金を貯めながら資金調達や節約の準備をしよう
美容室を開業する際、資金ゼロで開業するのはほぼ不可能と考えてよいでしょう。開業時は創業融資を利用して資金調達するのが一般的ですが、その際に最低限の自己資金要件をクリアしないと融資申込ができないからです。
また日本政策金融公庫の融資制度の中には自己資金要件がない制度もありますが、制度を利用するには条件があります。
前提として認定経営革新等支援機関の認定を受けなければ融資申込ができないため、実際は資金ゼロだと認定を受けるのは非現実的です。
資金がまだ準備できていない場合、まずは今からできる対策を始めてみましょう。
少しでも多くの開業資金をコツコツと貯めながら、低リスク・低コストで開業できる方法を検討してみてくださいね。