1人美容室の開業資金はどのくらい必要?融資や経営のポイントも解説
「美容室開業に必要な金額を知りたい」
「資金はどう集めたらいいのだろう?」
独立して自分の美容室を持ちたい、と1人美容室について検討するなか、最も気になるのが資金面ではないでしょうか。
特に開業資金を調達しないことには、美容室経営を始められません。
開業に必要な金額を知って、美容室経営を具体的にイメージしていきましょう。
この記事では、1人美容室の開業資金について必要な額や調達方法を解説します。
また、1人美容室の経営ポイントもまとめました。開業への不安をなくすためにも、ぜひご活用ください。
1人美容室の開業資金に必要な額は?
1人美容室とは、1人で美容室を運営する小規模経営のことです。
従業員は自分1人だけなので、自由度の高さが魅力的。
美容室の規模が小さいほど、必要な経費も限られるでしょう。
とはいえ、開業資金は余裕を持って準備しておくと安心です。
長く美容室を続けるためには、運転資金(現金)を多く確保し、赤字補填やトラブルが発生したときに柔軟に動けるよう備える必要があります。
では、実際にどのくらいの額が必要なのか、1人美容室の開業資金の実態を見ていきましょう。
開業費用は1,000万円未満
日本政策金融公庫の調査によると、新規開業にかかった費用の平均値は989万円。
美容業だけの数字ではありませんが、約1,000万円もの金額が開業時に動くことがわかります。
▼ 開業費、資金調達について
✔開業費用:平均値989万円、中央値560万円
✔資金調達額:平均1,194万円
※そのうち自己資金266万円(22%)、金融機関等からの借り入れ825万円(69%)
参照:日本政策金融公庫「2020年度新規開業実態調査」
また、美容室を開業するには、800~1,500万円の資金が必要とのデータもあります。
美容室の規模やこだわり具合にもよりますが、開業資金の目安として「1,000万円」が妥当といえるでしょう。
必要な費用は美容室の規模やこだわり具合による
開業資金の目安は1,000万円、と言われても、その額の大きさに戸惑いますよね。
1,000万円はあくまで目安であり、美容室の規模やこだわり具合によってその金額は大きくも小さくもできます。
▼ 美容室の開業にかかる費用の例
- ✔不動産契約にかかる費用(仲介料、保証金など)
- ✔テナント費、前払い賃貸料
- ✔内外装工事(新築?改築?居抜き?)
- ✔デザイン、設計
- ✔店内設備(イス、シャンプー台、ボイラーなど)
- ✔備品(シャンプー、カラー剤、タオルなど)
- ✔広告費(HP作成、チラシなど)
- ✔ランニングコスト(毎月の光熱費、人件費など)
美容室の規模を小さくして費用を抑えられれば、資金に余裕をもって経営をスタートできるでしょう。
こだわるポイントと節約できるポイントを絞り、開業時にお金をかけすぎないのも1人美容室を経営するコツです。
ですが、例えば自宅か?賃貸か?など、どのように運営するかによって必要な金額は変わります。あとになって「思った以上に開業資金を使ってしまった」と後悔することのないよう、具体的なイメージを持って準備を進めましょう。
開業資金や経費などの細かい数字は、事業計画書を作成するときにも必要になります。開業資金や事業計画書の作成について、実績のある専門機関に相談するのもおすすめです。
1人美容室の開業資金はどう集める?
安定した経営を目指すなら、1円でも多く開業資金を集めて資金面での負担を軽くしましょう。
1人美容室の開業資金について、調達方法を簡単に紹介します。
自己資金を貯める
自己資金とは、自分で所有するお金全般を指します。しかし、創業における自己資金は、
✔コツコツ貯めたお金
✔資産を売却して得たお金
✔援助、贈与されたお金
など、融資の際に「自己資金として認められるもの」を指している場合が多いです。
自己資金が多いほど、融資として借り入れる金額は少なくなります。
融資は返済義務がありますので、融資額が少なければ借入金の負担も減らせるのです。
自己資金の有無は、融資の審査においてとても大事な判断材料になります。開業を決めたその時からコツコツ貯めて、余裕を持った資金繰りを目指しましょう。
融資を受ける
開業資金の調達方法として、融資制度は必ずチェックしましょう。
約1,000万円もの開業資金を準備するには、融資が最もメジャーな方法です。
開業時に受けられる制度には、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」のような創業融資があります。
▼ 「新創業融資制度」より抜粋
✔対象者:新たに事業を始める方、税務申告を2期終えていない方
✔自己資金の要件:創業資金総額の10分の1以上
✔担保・保証人:原則不要
経営の実績がなく、自己資金が少額でも申し込みできるのは嬉しいポイントです。
融資のハードルがぐんと下がるので、利用しない手はありません。ほかにもさまざまな融資制度がありますので、条件が合えばぜひ活用しましょう。
助成金・補助金を受ける
国や地方自治体が設ける助成金・補助金も、資金の調達先として有効です。基本的には返済する必要がないため、資金面の負担がとても軽くなります。
ただし、
✔確実に受け取れるものではない
✔お金を受けるまでに時間を要する
などの観点から、タイミングや条件が合えば申し込むと考えた方が良いでしょう。
気になる方は、経済産業省が運営する、補助金・助成金を調べられるサイト「ミラサポplus」をぜひチェックしてみてください。
1人美容室のメリット・デメリットとは?
資金を調達し、開業の準備が整ったらいよいよ美容室経営のスタートです。経営を軌道に乗せ、長く続けるためには、失敗するリスクを減らすよう努力しなければいけません。
1人美容室のメリットとデメリットを理解することで、経営難につながる行動を避けられます。理想的な美容室経営を目指して、1つずつ確認していきましょう。
1人美容室のメリット
1人で美容室を経営するメリットには、以下のものが挙げられます。
✔開業費用やランニングコストを低く抑えられる
✔手の届く範囲なので管理が楽
✔固定客がつけば黒字化も早くなる
✔自分の思い通りのお店を作れる
✔人間関係に悩まずに済む
自由度が高く自分の思い通りの美容室を作るなら、1人美容室が最適です。
顧客のニーズに合うサービスを追求しながらも、こだわりのあるお店を作れます。
何より、資金面での負担が少ないです。軌道に乗れば、毎月のランニングコストを抑えつつ黒字化になる日も近いでしょう。
1人美容室のデメリット
自分の思い通りにお店を作れる一方で、1人美容室ならではのデメリットも存在します。
✔突然の休業により顧客が離れるリスク
✔1日に対応できる顧客の数が限られる
✔1人ですべて対応しなければいけない
✔売上や収入に限度がある
✔相談できる人がいない
従業員は自分だけなので、美容師・経営者としての仕事をすべて1人で対応しなければなりません。1日に対応できる顧客の数も限られるため、売上や収入に限度があります。
無理のない働き方でも利益を得られるよう、サービス内容や価格設定など、売上に直結する部分はよく考えて決めましょう。
1人美容室の経営ポイントとは?
全国に約25万店舗もある美容室のなかで生き残るには、事前準備がカギです。1人美容室の経営に失敗しないため、押さえておきたいポイントは以下の3つ。
1.綿密な事業計画を立てる
2.経営のノウハウを身に付ける
3.余裕のある運転資金の確保
美容室開業に向けて、今から準備できることもあわせて解説します。
01 綿密な事業計画を立てる
現段階で開業できるのか、これから始める事業は実現可能かを見極める材料として、事業計画書の作成はとても有効です。
▼ 事業計画のポイント
✔開業する意思(動機)は明確か
✔時期尚早ではないか
✔経験年数や実績はあるか
✔コンセプトや強みはなにか
✔根拠のある数字か
✔将来性を感じられる事業か
事前計画が甘く「何とかなるだろう」とどこか楽観的だと、もしトラブルが起きても柔軟に対応するのが難しくなります。
綿密な事業計画を立て、起こり得るトラブルに備えることが大切です。
ちなみに、事業計画書(日本政策金融公庫は創業計画書)は、融資の申し込みの際に提出を求められます。事前準備の1つとして、しっかりまとめておきましょう。
02 経営のノウハウを身に付ける
1人だろうが従業員を雇おうが、美容室を開業するからには経営者としての視点も必要です。お金の管理、集客方法や競合調査など、経営やマーケティングについて学んで知識を得ましょう。
- ✔経営の問題点を解決するヒントを得る
✔店舗運営のノウハウを知る
✔失敗につながりやすいパターンを知る
✔健全な経営状況か判断できるようになる
世の中には、たくさんの経営パターンや成功・失敗事例が存在します。
自身の経験だけでは得られない多くの知識から、美容室経営のヒントが得られるかもしれません。積極的に学び、自分のお店に合うノウハウを見つけてください。
03 余裕のある運転資金の確保
美容室経営が軌道に乗るには、半年~1年はかかるといわれています。
すでに自分の固定客がいて売上が見込めるのであれば、その分早く、赤字期間から抜け出せるでしょう。
経営が黒字化する、つまり利益を得られるようになるまでは、運転資金から赤字補填をしなければいけません。
資金繰りは、経営者の重要な役割です。
収支のバランスを見ながら、お金を使う優先度を決めて計画的な資金繰りを目指しましょう。自己資金もコツコツと貯めておきたいですね。
自己資金ゼロでも美容室を開業できる?
「自分の美容室を始めたいけれど、自己資金がない(少ない)」とお悩みの方もいるかもしれません。自己資金がなくても融資に通る例は稀にあるようですが、経営に影響はないのでしょうか?
自己資金ゼロでの美容室開業について、理解しておきたいポイントを解説します。
融資に落ちる可能性が高い
自己資金がゼロの場合、開業資金のほとんどを「融資」によって調達することになるでしょう。ただし、融資の制度によっては自己資金を条件とするものがあります。
つまり、自己資金がゼロではそもそも条件をクリアできず、融資に落ちる可能性が高いのです。
融資元(お金を貸す側)からすれば、返済が滞るリスクを避けたいのは当然といえますね。
自己資金がない場合の影響は、この他にも、
✔売上が出るまでの対策が打ちづらい
✔資金繰りが苦しくなりがち
✔自転車操業、さらなる借入金で負担増
✔自分の生活費がなくなる
など、もしもの場合に身動きが取りづらくなります。
融資を多めに受けられたとしても、いずれは返さなければいけません。
自己資金が手元にあればあるほど、安心して経営に専念できるでしょう。
独立ならほかの選択肢も視野に
自己資金がないのであれば、いまは店舗経営にこだわらず、ほかの選択肢も視野に入れてはいかがでしょうか。
現代は、美容室の働き方も多様化しています。面貸しやシェアサロンを活用して、費用をほとんどかけずに営業することも可能です。
フリーランス美容師として独立し、自身の顧客を集めながら資金を貯める方法もあります。
独立せずとも、現在の職場で技術力を磨きながら、美容室開業に向けての準備は進められるはずです。足りないものを自覚し、問題点を1つずつクリアしながら美容室開業を目指しましょう。
1人美容室に必要な開業資金の準備を始めよう
1人美容室は、比較的少ない資金で始められるメリットがあります。
働き方も自由に選択でき、思い通りのお店作りも可能です。
美容室の規模やこだわり具合によりますが、開業資金の目安は「1,000万円」といえます。こだわるポイントと節約できるポイントを絞って、無理のない資金計画を練りましょう。
この記事では、1人美容室の開業資金について必要な額や調達方法を解説してきました。
1人美容室の経営ポイントとして、以下の3つは特に重要です。
- 1.綿密な事業計画を立てる
2.経営のノウハウを身に付ける
3.余裕のある運転資金の確保
特に、運転資金の確保は欠かせません。創業融資をうまく活用して、余裕のある資金作りに努めましょう。不安なときは、実績のある専門機関にぜひ相談してみてくださいね。