美容室を開業するのに必要な資格は2つ。種類と取得方法を解説します
美容院を開業するにはどのような資格が必要なのでしょうか?
実は、美容室の開業に必要な資格は2種類あるんです。
この記事では、美容室の開業が初めての方でも、必要な資格と取り方がしっかりと理解できるように、わかりやすく解説していきますね。
美容室の開業には2つの資格が必要
美容室の開業に必要な資格は次の2つです。
①美容師免許
②管理美容師
美容師免許は美容師なら必ず持っている資格。
一方、管理美容師は、美容室を開業して1人で経営する場合は必須ではありませんが、他の美容師を雇うことを考えているなら必要な資格です。
所属する美容師の人数により、必要な資格が異なる
管理美容師が必要かどうかは美容室に在籍する美容師の人数によって変わります。
また、自分が資格を持っていなくてもこの資格を持っている人を雇うことで条件を満たせます。
【美容師の人数と必要な資格の早見表】
美容師の人数 | 美容師免許 | 管理美容師 |
1人 | 必要 | 必要ではない |
2人以上 | 必要 | 必要 |
開業したい店の規模をイメージして自分に必要な資格を確認しておきましょう。
自分1人で経営するなら美容師免許のみで開業できる
美容室を開業して1人でお店を経営していく場合は管理美容師の資格は必要ありません。
小さい規模でずっとやっていこうと考えるなら美容師免許のみで開業できます。
他の美容師を雇うなら管理美容師の資格が必要
他方、他に美容師を雇うつもりなら管理美容師の資格が必要です。
美容師が2人以上いる美容室に1人でも管理美容師がいればいいので、必ずしも自分が持っている必要はありません。
また、複数店舗を経営する際には店舗に応じて管理美容師も複数人必要になってきます。
経営だけなら資格は何も必要ない
美容室を開業し経営するだけなら資格は必要ありません。
美容師も管理美容師も雇うことで自分自身は無資格でも開業の条件を満たせるからです。
ただ、美容師の人は美容師の仕事が好きで「いつか独立したい」と考え開業する人が多いので資格なしで開業するのは少数派。
雇った美容師が辞めてしまう可能性もあるわけですし、やはり自分で資格を持っておくのが一番無難です。
美容室を開業するのに必要な資格① 美容師免許
美容師免許は、美容師として働くために必須な国家資格です。
美容師免許の資格がない場合は美容師の仕事を行ってはいけないと美容師法で定められています。
美容師としての活動はもちろんですが、美容師免許の資格がないと、自分一人で美容室の開業もできません。
美容室を開業するのに必要な資格② 管理美容師
美容室を開業する際に、場合により必要になるのが管理美容師の資格です
ここからは、管理美容師が具体的に何のための資格なのか、どうやって取得するのかを解説します。
管理美容師とは?
美容師を雇う場合に必要な資格が管理美容師です。
美容室では刃物や薬剤を取り扱いますし、直接お客様に触れてサービスを提供しているので万が一のリスクがあります。
管理美容師を置く目的は、そんなリスクからお客様の安全を守るためと美容室内の環境や衛生面の管理のためです。
美容師法十条の三の(管理者)には次のように記載されています。
「(管理者)
第十二条の三 美容師である従業者の数が常時二人以上である美容所の開設者は、当該美容所(当該美容所における美容の業務を含む。)を衛生的に管理させるため、美容所ごとに、管理者(以下「管理美容師」という。)を置かなければならない。ただし、美容所の開設者が第二項の規定により管理美容師となることができる者であるときは、その者が自ら主として管理する一の美容所について管理美容師となることを妨げない。
2 管理美容師は、美容師の免許を受けた後三年以上美容の業務に従事し、かつ、厚生労働大臣の定める基準に従い都道府県知事が指定した講習会の課程を修了した者でなければならない。」
美容師が2人以上の美容室には1人は必要ということです。
管理美容師になるためには美容師として3年以上の実務経験を積むことが条件です。
管理美容師の資格取得の方法
管理美容師の資格は次の3つのステップで取得できます。
【管理美容師の資格を取得するための3つのステップ】
1.美容師免許を取得する
2.美容室で3年以上の実務経験を積む
3.管理美容師の講習を終了する
1つずつ解説していきます。
01 美容師免許を取得
管理美容師を取るためにはまず美容師免許を持っていることが大前提となります。
厚生労働省のサイトの『理容師・美容師免許の取得まで』に流れが書いてありますが、厚生労働大臣認可の美容師の養成施設で受験し、免許を申請して取得します。
美容師の養成施設は基本的に高等学校卒業者が入れますが、高等課程が受けられる施設や通信制課程でなら中卒でも入学でき、美容師免許の資格取得ができます。
02 美容室で3年以上の実務経験を積む
管理美容師の資格は美容室で3年以上の実務経験を積まないと、どんなに腕の良いカリスマ美容師でも取得できません。
まずは3年間、自分の美容室を開業する計画やイメージをしながら経験値を上げていきましょう。
いずれ美容師を雇う立場になるなら雇われる側の気持ちも主観で体験しておくことも大切。
また開業には資金も必要です。
「早く開業したい!」という気持ちもあるかもしれませんが、実務経験を積む3年間で計画的に資金を貯めていくと、開業に向けて前に進んでいると実感できます。
03 管理美容師の講習を修了する
美容師免許を取って、3年以上の実務経験を積んだら管理美容師を取得するための講習を受けられます。
管理美容師の講習は各都道府県で実施されています。
【管理美容師の講習を受ける流れ】
1.WEBか郵送でエントリーする
2.申込書類が郵送されて来るので必要書類を返送する
3.受験票が届く
4.3日間の講習を受講する
5.修了証書が交付される
受験票は受講の1週間前には届きます。
講習会は公衆衛生を4時間、理・美容所の衛生管理を14時間と、合計18時間の講義を3日間で受講します。
公益財団法人 理容師美容師試験研修センターのサイトの『管理理容師・管理美容師講習会』からも、講義の詳しい内容をチェックできます。
1人で経営する場合も管理美容師は取得するべき?
開業後しばらくほかの美容師を雇うつもりがなくても、あらかじめ管理美容師の資格は取得しておいた方が良いでしょう。
1人で美容室をスタートする場合は、美容師免許があれば開業自体は可能です。
ただ、独立して1人でやっていく場合でも後々になって規模を大きくしたくなったり、他の美容師を雇いたくなったりするかもしれません。
その場合、後から管理美容師の資格を取ろうとしても、時間的な制約から難しいことが予想されるためです。
また、管理美容師は以下の2つの役割もあります。
1.美容室のリスクからお客様の安全を守る
2.美容室の環境や衛生面の管理
ほかの美容師を雇用しない場合は必須ではないとはいえ、お客様に安心して美容室に通っていただくことを考えると持っておいた方がいい資格と言えるでしょう。
美容室を開業するのに必要な届出
美容室を開業するときに必要な届出は、個人か法人のどちらで開業するかによって違います。
個人の場合は法人よりも手続きが少ないですが、どちらにしても開業前と開業後に多くの届出が必要です。
【開業の届出の流れ】
1.個人か法人か決める
2.開業前に保健所への届出
3.開業後に税務署や都道府県税事務所などへの届出
スムーズにオープンできるように必要な届出について把握しておきましょう。
01 個人事業主か法人かを決める
届出の手続きが個人と法人で変わってきますので、まずは個人事業主か法人のどちらで開業するか決める必要があります。
【個人事業主のメリット】
✔届出の手続きが簡単
✔個人事業主になるときにはお金はかからない
【法人のメリット】
✔個人より節税しやすい
✔信用が高い
個人事業主になる場合は手続きが簡単で費用はかかりませんが、法人化する場合は会社設立時に費用が発生しますし、決算や手続きが増えます。
一方で、法人化すると経費で認められる範囲が広くなったり、赤字の繰越が最大10年になったり節税面で有利になります。
一般的には、かかる費用やリスクが少なく、手続きが簡単な個人事業主でスタートして、売り上げが増えてから法人化を意識する人が圧倒的に多いです。
最初から法人化を考えている場合は次の5つを決めて法人設立を進めます。
①法人名
②事業年度
③資本金
④発行株式数
⑤株主
法人化の手続きは1人では難しいので、税理士や司法書士などの専門家に相談しながら進めていくと滞りなく進めることができます。
個人事業主と法人では届出に違いがあるので、まずはどちらでスタートするかを決めておきましょう。
美容室の開業前に必要な保健所への届出
開業前に必要なのが保健所への届出です。
まずは内装業者に計画図面(平面図)をもらって、工事開始前に必ず保健所に事前相談をしましょう。
オープンの予定が決まったら、オープン日の10日前までに必要書類を保健所に提出します。
【保健所に提出する書類一覧】
- ✔開設届
- ✔施設の位置図
- ✔施設の平面図
- ✔施設の構造・設備の概要
- ✔従業者一覧
- ✔美容師免許(全員分)
- ✔管理美容師の修了証
- ✔医師の診断書(結核、皮膚疾患について記載した発行後3ヶ月以内の物)
- ✔外国人登録証明書(外国人のみ)
- ✔登記簿謄本(法人のみ)
- ✔手数料
開業する美容室に美容師が2人以上いる場合、管理美容師の資格が必要になります。
届出が遅れてオープンが延期にならないよう、必要書類に関しては保健所の人に確認してしっかり準備していきましょう。
開業後の届出
開業後には開業届などの手続きが必要です。
【開業後の手続きが必要な場所一覧】
✔税務署
✔都道府県税事務所
✔市町村消防署
✔労働基準監督署
✔ハローワーク
✔年金事務所
保健所の届出と同様に個人事業主か法人かで必須な届出と任意の届出があるので注意が必要です。
開業後に必要な手続きについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています▼
美容室開業に必要な資格や書類は早めに取得を
美容室開業の届出や手続きは多く、時間がかかる上に期限もあります。
あらかじめ手続き場所に提出する書類を確認して漏れがないように計画的に進めることが大切。
スムーズに届出や手続きを終わらせて実務に取りかかりましょう。
また、美容室を経営する際には手続き面とあわせて、資金面での準備も怠ることができません。
開業後、スムーズに経営をするためにも、専門家の助言を利用し準備を進めていきましょう。